孫遜 教授

南ユタ大学 芸術監督

 2025年春、南ユタ大学で開催された音楽会において、私たちはひとつの画期的な試みに挑戦しました――東洋の身体芸術「一水空」と西洋の交響楽団との融合ステージです。芸術監督として、これは単なる舞台上のコラボレーションに留まらず、文化と教育を横断する探求であったと強く感じています。

 舞台に立つ林陽(リン・ヤン)先生の姿は、静けさと力強さを兼ね備え、柔らかさの中に剛を、動きの中に静を宿しています。一水空の水のように円やかで滑らかな動きは、尹氏八卦掌の内に秘めた勁(けい)の力とともに、音楽のリズムや情感の起伏と見事に呼応しました。まるで身体と音楽が無言の対話を交わし、一幅の生きた東洋の書画を描き出すかのようでした。

 私はこれまで、西洋音楽教育の中に東洋文化のエッセンスを融合させることを目指して活動してきましたが、今回の舞台はまさにその長年の探求の結実でした。観客は単に音楽を「聴く」のではなく、林先生の身体を通して音楽を「見る」ことができたのです。音楽が彼女の体内を流れ、形を変え、そして昇華していく姿は、まさに芸術の真髄といえるでしょう。

 私は、このような文化や表現形式を越えたアートの協働が、現代の音楽教育に新たな視点をもたらし、そして世界の多様な文化の融合において、東洋の叡智が独自の貢献を果たすと確信しています。